本研究の遂行により、宇宙航空分野の技術発展に伴う長時間の極低温ポンプ・配管などの作動の可能性、あるいは超伝導技術に関連したキャビテーション気泡力学の基礎研究として、まず極低温の液体窒素中へのパルスYAGレーザーの照射によって生じるプラズマと、それに引き続く蒸気気泡の急速な膨張に伴う球状衝撃波の伝播、および蒸気気泡の成長と収縮、さらに気泡のリバウンドとその後の気泡表面の不安定性等の現象が高速度可視化実験により解明された。さらに、この可視化実験により得られた気泡等価半径の時間的挙動と、相変化を含む数値解析の結果および常温の水に対する他の実験を比較する事により、初期の気泡膨張、最大半径後の収縮と、リバウンドおよび2度目の極大点までをシミュレートする凝縮係数の推定が可能となり、実験と解析結果との比較により凝縮係数値0.02-0.04程度の値を得た。また、固体壁面での壊食と加工問題に関連して、黄銅板、鉛板を用いて、大気圧条件あるいは加圧条件下において固体平面壁近傍で生成された液体窒素中の気泡挙動の実験より、気泡の変形挙動と液体ジェットの形成、およびジェットと固体壁の干渉、さらに気泡位置の時間変化などが解明され、極低温液体中のパルスレーザー照射による干渉問題の、通常温度域の液体(高サブク-ル度の水など)における干渉問題との類似点、相違点が解明された。さらに繰り返し実験後の固体壁面の拡大顕微鏡写真により、表面の壊食状況が明かにされたが、詳細な実験を繰り返すことができず、今後の研究課題となった。得られた結果と考察は後述のように内外の学会講演で公表されており、他の学会誌にも発表予定である。
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