本研究では、沿岸域に係留された超大型浮体式海洋構造物に津波が作用した際の、津波が浮体式海洋構造物及びその係留システムに与える影響を明確にすることを目的としている。この際、沿岸域における津波を想定した数値シミュレーション法を開発し、水槽実験と併せて、超大型浮体式構造物に津波が作用した際の運動応答特性と係留系に作用する係留力の応答特性を解明する。 今年度は、超大型浮体式海洋構造物を剛体であると仮定し、数値シミュレーション法の開発を行った。 海岸付近に設置される海洋建築物に津波が作用した場合には、大きな津波波力が働き、浮体式海洋建築物の応答に与える影響が大きくなることが考えられ、沿岸域に設置された浮体式海洋建築物にとって、防災上無視できない問題であると考えられる。そこで、海洋空間の有効利用を図るために浮体式海洋建築物にとって無視できない外力である津波に対する初期設計の段階で有用な応答算定手法の確立を目指した。 本研究では、浮体設置点における津波波高ならびに津波波長の推定の可能性について、津波伝播計算から得られた波形と孤立波との相関を明らかにした上で、津波相当孤立波という概念を提案し、計算労力を低く抑えた形で津波波力の算定ならびに津波中浮体応答の算定を行う手法を開発した。 開発された手法を用いて、津波作用時の浮体式海洋建築物の応答について検討を行った。その際、津波が浮体式海洋建築物の設計に与える影響を明らかにするために、同一の設置条件及び係留条件における風波による不規則波中応答算定結果と係留索張力に関して比較・検討を加えた。その結果、津波作用時の係留索張力は、異常波浪時の風波による係留索張力を上回る場合があり、浮体式海洋建築物の設計において重要な検討項目となることが確認された。
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