アパタイトのフィッション・トラック(FT)短縮の温度-時間条件は石油熟成の温度-時間条件に極めて近いことから、FT法が石油鉱床探査に応用することができる。アパタイトが受けた熱履歴や、FTが消滅している深度がわかれば石油の熟成域が推定される。また各種の岩石から分離した鉱物中のU-238のFTの熱の影響を調べることにより、金属鉱床を探査することも可能と思われる。今回は中国北東部、ハイラル盆地(ハイラル油田)、松遼盆地(大慶油田)、遼河盆地(下遼河油田)のいくつかの坑井より得られたボーリングコア試料よりアパタイトを抽出し年代測定を行った。岩石試料よりアパタイトをテーブル選鉱、磁力選鉱、重液選鉱により選別し、分離した試料をテフロン等にマウントし、九州大学理学部のタンデム加速器を用いて各種の重イオンを照射した。入射イオン密度はAuをターゲットにしてラザフォード散乱法と半導体検出器を利用して制御した。重イオンの通過により損傷した部分エッチングにより拡大し、さらに、それらの重イオントラックと交叉する結晶内部のウランのFTが検出されるまでエッチングを行った。このようにして鉱物内部のFTを検出し、それらの飛程測定を行い、その分布パターンを解析することが可能となった。得られたアパタイト年代はおよそ1億年程度であった。松遼盆地の試料はかなり高いヒートフローを示し、石油熟成との関係が示された。
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