研究概要 |
リンゴのゲノムDNAからPCRによって、イントロンを含むホメオボックス遺伝子の保存領域の単離を試みたところ、塩基配列の異なる2種類の部分配列が得られ、これらをAPHB1、APHB2と名付けた。両者は塩基配列で40.7%の相同性を示した。このうちAPHB2は、すでにニホンナシから単離されている部分配列の同じ領域と、塩基配列で94.8%、推定されるアミノ酸配列では完全に一致した。この結果から、リンゴのホメオボックス遺伝子の塩基配列は、比較的近縁な属間では、通常変異の集積しやすいイントロン領域を含み、高度に保存されていることが示唆された。 推定されるアミノ酸配列を他のホメオボックス遺伝子と比較したところ、それぞれのトウモロコシやイネから単離されているclass1,Class2 と呼ばれるホメオボックス遺伝子群との間に高い相同性が認められた。classlとClass2はともにKnotted1型のホメオボックス遺伝子であるが、アミノ酸配列ばかりでなく発現パターンにも違いがみられていることから、それぞれ生体内で異なる機能をもっていると考えられている。実際にリンゴから得られた2つの遺伝子の発現をRT-PCRによって解析したところ、APHB1の発現は茎頂と茎および花に限られていたのに対し、APHB2は成熟葉と未熟果を含む供試したすべての器官に発現が認められ、それぞれ既知のclassl、class2型の遺伝子群とよく似た発現パターンを示した。以上の結果から、リンゴには少なくとも2種類のホメオボックス遺伝子が存在し、それぞれ異なる形態形成についてその調節に関与している可能性が示唆された。
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