研究課題
申請者は前年度までに、リンゴにもホメオボックス遺伝子が存在することを示している。本年度は、落葉果樹生産において特に問題となる樹体の自発休眠現象に対するホメオボックス遺伝子の関与について解析を進めた。自発休眠は、茎頂分裂組織が自身の活性を自律的かつ可逆的に低下させる現象であるととらえることができ、またホメオボックス遺伝子は一般に植物の形態形成、特に茎頂分裂組織の維持、形成に関与していると考えられているため、この現象においてホメオボックス遺伝子が極めて重要な機能を担っている可能性が考えられるためである。リンゴから単離した2種類のホメオボックス遺伝子APHBl、APHB2の塩基配列をもとに、ニホンナシ茎頂由来のcDNAライブラリーをスクリーニングしたところ、4種類の異なるクローンが得られた。このうちJPHlとJPH21の2クローンがそれぞれAPHBl.APHB2と極めて高い相同性を示した。推定されるアミノ酸配列を用い、すでに報告されている他のホメオボックス遺伝子とクラスター分析を行ったところ、ニホンナシの4つのクローンはそれぞれ機能分化が予測される異なる遺伝子群に分類された。実際にこれら4つのホメオボックス遺伝子の発現を、ニホンナシの各器官ごとにRNA gel blot analysisにより解析したところ、JPHl、JPH6、JPH27の3クローンはいずれも茎頂および茎で発現しており、未熟葉、成熟葉のどちらにも発現は認められなかった。一方JPH21は供試したすべての器官に発現していた。さらに興味深いことに、JPHl.JPH6、JPII21の3クローンは休眠頂芽内においても引き続き発現が認められたが、JPH21は休眠頂芽内で発現が消えていた。休眠期の分裂組織内における発現パターンの違いから、ニホンナシの自発休眠にホメオボックス遺伝子が関与している可能性が示唆された。これらの研究成果は園芸学会平成10年度秋季大会において口頭発表した。
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