研究概要 |
1.野性ユリの遺伝資源の収集や種の保全を考える基礎資料とするため、種内変異、種間レベルでの遺伝的分化を近畿地方から東北地方まで広範囲に分布するヤマユリ(岩手県雫石、茨城県茎崎町、山梨県上野原町)を材料に取り上げ、そのDNAの変異をRAPDで調査した。PCR条件はMgCl2,1.5mM、TaqDNAポリメラーゼ(Ampli TaqGold)0.25U/muが最適であった。10プライマーで検出した59バンドのうち、特定の地域に多く見られるバンドがあった。また、クラスター分析の結果、岩手県雫石のヤマユリの個体群は比較的まとまったクラスターを形成した。これらの点から3地域に自生するヤマユリは地理的隔離をの影響を受け、それぞれ独自の遺伝的分化をしていることが明らかになった。 2.ヤマユリと対照的に限定された地域に生育するオトメユリの遺伝的分化を検討するため、飯豊連峰に自生するオトメユリの自生地の調査を行った。 3.ユリ採取の簡便性とin vitro保存の材料の供給元として、茎、蕾などの培養を考え、そのため培養条件を検討した。また、どのような種(7種)に適用できるのか検討した。器官別に見ると球根形成率が高かった部位は蕾の基部、花柱、花糸であった。また、ピクロラムに比べナフタレン酢酸を添加した培地で球根が形成されやすい傾向にあった。供試したすべての種の花器から球根が形成され、保存用球根を得る部位として花器が適していることが明らかになった。特に、L.candidumが高い形成能を示した。
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