研究概要 |
1. Lilium属植物は世界に約130種、日本にはヤマユリ、ヒメサユリなど15種が存在する。しかし、形態形質のみに基づいて行われた分類では種間の類縁関係が明確ではないところがある。そこで、DNA多型を用いて日本に自生するLilium属植物の類縁関係を明らかにする事を目的に,今年度はリボソームDNAのITS領域の塩基配列を利用して、57種間の系統関係を検討した。その結果,1)形態により同節に分類されている種のほとんどは、今回作成した系統樹の同一の分岐群に属した。2)Daurolirion節はSinomartagon節から独立しているとはいえず、Sinomartagon節に統合することが適当であった。3)L.henryiは6a亜節に、L.bulbiferumはSinomartagon節にそれぞれ分類することが適当であった。4)6b亜節は、6a亜節及びArchelirion節よりもSinomartagon節により近縁であり、Sinomarutagon節から直接分岐したと考えられた。5)ITS領域を用いた系統推定は、属、節及びほとんどの亜節で有効であった。 2. 日本のユリの多くの種において個体数の減少が著しく、レッドリストには10種が掲載されるに至っている。そこでin vitroの保存の材料の供給元として、茎、蕾などの器官培養によってユリ子球を確保することを検討した。その結果,1mg/lNAA、0.1mg/lBAを含むMS培地で蕾基部を培養することによって、供試した全16種のLilium属植物から効率よく子球を獲得できた。従って、ユリ属は蕾を収集することにより、遺伝資源をIn vitro保存できることがわかった。
|