1.これまで、従来の形態による分類では不明確であった種の類縁関係をDNAシークエンス(rDNA)を用いて明らかにしてきた。今年度は、ユリ属の中でも、特に分類上混乱をきたしていたSinomartagon節を分析した。Sinomartagon節は多系統であり、6分岐群に分かれた。そのうちのひとつの分岐群は本節の基準種L.davidiiを含んでおり、真Sinomartagon節とみなすことができたが、その他の分岐群はSinomartagon節とは明らかに系統が異なっていた。 2.rDNAを用いた系統解析では、ユリの類縁関係を明らかにすることができたが、一部の分岐については信頼性が低くかった。そこで、葉緑体のmatK領域を調査することにより、それらを明らかにすることにした。 matKより作成した系統樹では、Sinomartagon節と6b亜節の関係及びArchelirion節と6a亜節の関係はrDNAと同様であったが、Liriotypus節とL.amoenumは位置が前後した。またrDNAでは、L.henryiは6a亜節と姉妹関係にはあったが距離は大きかった。しかし、matKでは両者が明らかに近縁であることが示された。また、5c亜節に分類されるL.amoenumは、6a亜節やArchelirion節に姉妹関係であった。 3.球根のin vitro保存を行い生存率や形態の変化を調査した。in vitro保存条件下2年間、小球の形態や生育が安定しており、本保存法は遺伝資源の保存に有効である。 4.我が国に自生するヤマユリの自生地を国内5カ所(岩手、福島、新潟、長野、山梨)を調査した。
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