理論的解析の場面では、まず個体群動態を雌-雄相互作用として記述する独自の数理モデルを、俯瞰的解析が容易な微分方程式と具体的な繁殖過程が組み込みやすい差分方程式の2種類の枠組みで作成し、性比の生態的意義解析のための数理的基盤を固めた。現在これらのモデルを用いて出生時の一次性比や実現性比と個体群動態との関わりについて考慮すべき要因の抽出を行い、問題点を明らかにする作業を行っているが、絶滅しにくさからみた生態的最適性比がふつうの倍数型生殖種では1:1であるのに対して半数倍数性昆虫では大きく雌に偏ること、過疎に対する耐性という点でも後者が前者よりはるかに有利であることなど、いくつかの興味ある予測が得られつつある。 一方、実験的解析の場面では、すでに室内飼育システムを確立している半倍数性昆虫の1種、植食性のカブラハバチを用いた実験を開始し、交尾様式や産卵曲線など、繁殖の基本特性を解析する中で、本種雌は未交尾のままでも交尾雌と同様に産卵を行う事実を明らかにした。さらに、理論モデルからの仮説の検証のための具体的データを得るべく、餌条件、生息密度、親の性比などの環境条件と実現性比の関係など、性比変動の実態を実験的に追究している。
|