研究課題
ホタルルシフェラーゼ遺伝子(LUC)をレポーターとして用いた転写活性の測定系は高感度で非破壊的計測が可能であり定量性にも優れている。本研究ではLUCと培養細胞(BY-2)の特性を活かし、高等植物防御遺伝子の発現調節解析への応用を試みた。今回、新たにBY-2形質転換体の選抜とLUC活性の検出条件、培養条件等を検討し、最高で500倍以上のSAによるLUC活性の発現誘導をin vivoで検出できる実験系を確立した。この系を用い、SAと類似した活性を持つBTH及びINAについてSAと比較したところ、PR1aプロモーターの活性化能はBTH、INAともにSAよりも低く、植物体を用いた圃場レベルの実験結果とは異なる結果が得られた。一方で形質転換タバコを用い、LUC活性を指標としたたin plantaアッセイ系による解析も試みた。この方法では、植物体へのサリチル酸(SA)処理で明瞭なLUC活性の誘導が認められ、その経時変化は内性PR1a遺伝子の発現パターンと類似する。しかも、非破壊的な連続観察が可能であるため迅速で簡便なアッセイが可能である。この系を利用して、SA、BTH、INA、βアミノ酪酸、プロベナゾールなど各種薬剤の処理により、それらのPR1a遺伝子の誘導能を比較した。切断葉を用いた場合の誘導能はBTH(3ppm)>SA(50ppm)>INA(50ppm)=βアミノ酪酸(50ppm)の順であったが、プロベナゾールは50ppmでLUC活性の誘導は殆ど認められなかった。BTHは0.1ppm以上で誘導が検出可能であったが、SA、INA、βアミノ酪酸は10ppm以上の薬剤濃度を用いる必要があった。今後、これらの実験系を用いた細胞レベルでの防御遺伝子の転写活性化、情報伝達系の解析などへの応用が期待される。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)