研究概要 |
タイ東北部の塩土から分離した高度耐塩性細菌、Halomonas elongataは食塩を最適濃度3%含む培地で最大増殖速度を示し、食塩濃度25%でも旺盛に生育する。その要因は高塩濃度下ではアミノ酸誘導体であるエクトイン(1,4,5,6-tetrahydro-2-methyl-4-pyrimidinecarboxylic acid)を細胞内に高濃度に蓄積し、浸透圧を保っていることにある。エクトインを培地に添加すると大腸菌、枯草菌の増殖が高塩濃度でも可能になった。エクトインはaspartate β-semialdehydeからdiaminobutylate、N-acetyl-diaminobutylateを経て3段階の酵素反応で生合成される。H.elongataのゲノムライブラリーから得られた約4kbpのDNA断片の塩基配列から3酵素の遺伝子(反応順にectA,ectB,ectCと命名)はオペロンを成していることが解った。このオペロンを導入した大腸菌は耐塩性が上昇した。そこで本研究ではこれら3遺伝子を利用した耐塩性植物の分子育種を開始した。 ectA,ectB,ectC遺伝子をそれぞれCaMV35Sプロモーター支配下に置き、3者を連結しカナマイシン耐性遺伝子とハイグロマイシン耐性遺伝子で挟んだバイナリーベクターを構築した。タバコでの3遺伝子の発現を確認するために、タバコ培養細胞(Nicotiana tabacum cv.BY2)に導入した。両薬剤存在下で選抜した独立したカルス10クローンを選びPCRでect遺伝子の存在を確認後、ノザン解析を行った結果、発現が確認された。CaMV35Sプロモーターを4つ使用しているが懸念されたジーンサイレンシングは起こっていないと思われた。 そこでこれら3遺伝子をタバコ植物対に導入した。サザン解析で3遺伝子が存在する再生タバコを6個体得た。第2世代について、遺伝子発現、エクトイン蓄積、耐塩性を調べる予定である。
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