本年度は木材を加熱油処理した場合の含油率、含水率、強度性状について検討した。供試材は主にスギ材で、加熱油処理にはパームオイルを用いた。結果の概要は次の通りである。 1.木材を加熱油処理(処理温度:50℃と200℃)した時の木材の含油率と含水率を全乾法とクロロホルム/メタノール抽出法で測定した。含油率の測定には一般にクロロホルム/メタノール抽出法用いられているが、この方法は時間と手間を要するので、全乾法を試みた。両方法で測定した結果はほぼ一致したことから、測定が比較的容易な全乾法で加熱油処理における木材の含油率と含水率を同時に測定することが可能であった。2.木材を加熱油処理した場合、木材の含油率は処理温度と木材の水分状態に大きく影響された。木口試験片[30(T)x30(R)x5(L)mm]について、50℃で処理した場合、含油率は気乾材(約150%)が最も多く、次いで全乾材(約130%)、飽水材(約7%)で、飽水材の含油率はきわめて小さかった。200℃で処理した場合、含油率は飽水材(約200%)が最も多く、次いで気乾材(約150%)、全乾材(約100%)であった。処理温度が低いと木材内部の水が蒸発せず、油との置換が行われないためであると思われる。温度が高くなると、木材中の水分が蒸発し、油と置換が容易に起こるためであると思われる。200℃で処理した場合、木材はほとんど全乾状態になっていた。3.密度が小さい材ほど、含油率は高くなった。4.TLタイプの試験片[5(T)x10(R)x15(L)mm]について、50℃で7時間処理した場合、曲げヤング率はほとんど影響を受けなかったが、曲げ強さは12%減少した。200℃で7時間処理した場合は、曲げヤング率は10%、曲げ強さは38%減少した。加熱油処理は曲げ強さへの影響が大きかった。
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