研究概要 |
木材腐朽作用を持つ担子菌、Phanerochaete chrysosporiumおよびBjerkandera adusta(やけいろたけ)の培養液からリグニン分解酵素であるリグニンペルオキシダーゼ(以下LiP)およびマンガン(II)ペルオキシダーゼ(以下MnP)を分離し、イオン交換クロマトグラフィーおよびHPLCにより精製した。 先ず、LiPについて、2,3-ジメトキシンベンジジンを基質として各種の水混和性有機溶媒中での反応を行い、エチレングリコール中で水中よりも高い活性を認めた。また、他のグリコール類やアセトン中でも高い活性が保持されることを認めた。また、これらの溶媒中でグアイアコールなど、他の基質の酸化反応が起こることも確認された。有機溶媒中での反応は、基質のイオン化ポテンシャルや親媒性、溶媒の溶媒和などに影響を受けることが示された。 一方、LiP蛋白の遊離のアミノ基を化学的にアセチル化、ベンジル化およびMPSS化して得た化学修飾LiPは、グリコール中では非修飾酵素よりも高い活性を示した。 ついで、リグニンモデルポリマー(DHP)を合成し、LiPによるアセトン-メチルセルロソルブ中での分解を検討した。その結果シナピル型DHPは分解されず、むしろ高分子が生じが、シリンジル型DHPは低分子化され、特にアスコルビン酸などのラジカル消去剤の存在下では分解が促進されることが分かった。 さらに、MnPについても有機溶媒中での反応を試み、LiP反応との相違を検討した。
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