海底熱水口や高温の温泉には、分離培養が困難又は不可能な未知超好熱菌が生息し、その耐熱性の酵素や遺伝子の開発が大きな注目を集めている。そこで本研究では、熱水環境中より直接DNAを抽出し、16SrRNA遺伝子を用いた分子系統解析により新規好熱菌群の多様性を明らかにするとともに、既に分離した超好熱古細菌Aeropyrum属の系統分類学的位置の再検討を行った。本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)長崎県橘湾の海底熱水口(128℃、pH7.5)と、雲仙温泉(93℃、pH3.0)の熱水を採取し、昨年度報告した方法により好熱菌の系統解析を行った。既報の超好熱古細菌や好熱細菌以外に、雲仙ではその大部分が未知の好酸古細菌であった。また海底熱水口からは、多様な未知の古細菌由来のrDNAが見出され多くはCrenchaeotaに属していたが、最も原始的な古細菌と考えられる未知の多様なKorarchaeotaが存在することが明らかになった。 (2)海底熱水口より分離された唯一の絶対好気性超好熱古細菌Aeropyrum pemixのより正確な系統類学的位置を明らかにする目的で、23SrDNAの全長の塩基配列を決定し、GC含量の偏りが認められたためトランスバージョン型の塩基置換率を算出し、近隣結合法により系統樹を作成した。そ結果、AeropyrumはPyrodictiaceae科及びDesulfurococcacoeae科の嫌気性の硫黄代謝性超好熱古細菌と比較的近縁であるが、いずれの科にも属さないことが有意に示された。
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