平成10年度は、本研究の第二の課題を中心にストックを貨幣評価するために、特色的な「資源構造(社会資産構造)」をベースとして、16年間にわたるフロー(コストの発生と外部経済効果、マイナス効果)面の実態把握を行なった。調査対象地としてフロー面の多様性を把握するために、水利体系が大規模で、受益地に様々な変化が生じている愛知用水事業を選定した。 (1) まず、水利事業のフロー面をストック機能と関わらせて把握するために、現状の単式簿記形式の款項目を再編成した上で、分析対象の水利費を再計算した。 (2) 土地改良区の維持管理活動の中で、最大のコストは組織的運営に関わる人件費であり、総コスト増加への増減寄与率も最大であった。 (3) 水利施設の直接的維持管理費は16年間比較的安定的に推移しており、施設の高度化による合理化効果が著しいことが判明した。 (4) したがって、フロー面を「コスト」に限定してみると、受益地の都市化や耕地分散、土地利用の多様化による職員対応に大きなコストを要していることが判明した。つまり、ストックの減価償却的費用よりも組織運営的コストが大きな割合を占めている。 (5) 他方、フロー面を「収益」でみると、当然のことながら賦課金収入に大幅に依存しており、人件費を中心とするコスト圧を負担金の増大で賄われていることが明らかになった。 平成10年度の調査結果は、スットクの大きさに関わらないフロー(人件費)のシェアが非常に大きく、実態的に外部経済効果やマイナス効果面の把握が皆無であり、水資源会計の構築に当たり、これらのフロー面の款項目の導入の必要性を示している。
|