研究概要 |
最終年度の研究では、前年度の財務分析を受けて、(1)水利費の負担能力の計測と(2)水資源会計におけるフロー面の計測に関する理論的研究を行なった。二つのテーマの位置づけは、(1)の課題が水資源会計の最重要部分をなすフロー面の計測構造開発の前提条件を探ることにあり、(2)の課題は(1)を受けて直接、フロー面の計測構造開発そのものである。 (1)の水利費の負担能力の計測は、前年度に引き続き愛知用水土地改良区内の東海市の42戸の農家を対象に農家経済経営分析を行なった。その結果、10アール当たり負担能力は稲作農家30戸のうち1戸のみが2,787円の正の値となった。その原因は米価低迷と過剰装備による。しかし多角化した経営では花卉、野菜部門では各6戸が正の値となった(最大428,247円)。つまり、稲作のみでは水利費が負担できない実態が明らかになった。本研究は水利事業の外部経済・不経済を会計的に計測し適正な負担と管理を実現することにあるが、フロー面の計測の基本的要件が明らかになった。 (2)の計測方法の開発では、水利事業のインプット面は自然合体資産、土地合体資産等の各年度費消価値及び投入により計測される。しかし弾力的な市場を持たないアウトプット面は効果の種類、範囲をどうするか、貨幣評価問題など基本的課題に直面する。したがって、会計学の発生基準(production basis)の準用とインプットとの対応により把握する方向が考えられる。今後この視点から研究を継続したい。
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