地盤や土構造物は一般的に力学的・水理学的に異方性を有する。土の中の水の流れに関しても方向によって透水性が異なることが知られている。このような地盤や土構造物中に浸透流が生ずると浸透水は特異な流れを起こし浸透流量や安定性に大きな影響を及ぼすことが知られている。 まず、土の異方透水性がダムや地盤中の浸透流にどのような影響を及ぼすかについて数値解析的に考察した。そして、異方性の値が大きくなると、流量の増大、浸潤線や浸出点の上昇、等ポテンシャル線分布の拡大、浸透破壊に対する安定性の低下が起こることを明らかにした。そして、地盤中の異方浸透流特性は、数学的な特性だけではなく浸透領域の形状や境界条件によって著しく影響されることがわかった。この成果については、第56回農業土木学会京都支部研究発表会にて論文発表を行った。 また、二次元異方性土に関して室内透水試験における供試体中の浸透流特性すなわち異方透水性の発現メカニズムを数値解析的に明らかにした。そして、圧力型の透水試験における透水楕円、誘導動水勾配の発生と挙動についてまとめ論文発表した。 地盤の異方透水特性や異方性発現メカニズムは数値解析的には次第に明らかになってきたが実際の地盤においてそのような現象が起こるかどうかについて検証する必要がある。今後、本研究初年度に試作した異方透水性試料作製装置を用いて、理論的考察や数値解析結果から得られた一次元拘束流れの概念、一次元拘束流れの透水係数、誘導動水勾配が実際に存在するのかどうかについて実験的に考察を進めて行く必要があると考えられる。また、現場で実地盤の透水係数テンソル成分を求める手法を理論的・実験的に明らかにして行く必要がある。
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