前年度は家畜のモデル動物として鶏を用い、その肝細胞および筋細胞の培養システムを確立した。そこで、本年度は生理活性物質を検索するための培養条件を検討し、種々の生理活性物質に対する細胞応答を観察するとともに、未知の生理活性物質の検索を試みた。 (1) 鶏筋細胞を用いた生理活性物質検索システムの確立 7×10^3cells/cm2の濃度で鶏筋芽細胞培養し、培養1日目(増殖)、培養2日目(初期分化)および培養3日目(終末分化)に生理活性物質を添加することにより、それぞれのステージに影響する生理活性物質が検索できることが示された。 (2) 鶏肝細胞を用いた生理活性物質検索システムの確立 各種アミノ酸、グルコースを添加したBME培地に、0.12μg/mlアプロチニンを添加することにより、少なくとも24時間は生理活性物質を検索するのに適した無血清培地での培養が可能となり、生理活性物質を検索するための培養実験系を確立することができた。 (3) 鶏筋細胞および肝細胞における各種生理活性物質の細胞応答 筋細胞:プロスタグランジンE2は鶏筋細胞の初期分化を刺激し、筋細胞の分化を促進させることが明らかとなった。さらに、β-ハイドロキシ酪酸は筋細胞の終末分化には影響しなかった。 肝細胞:α-リノレン酸だけではなく、リノール酸の添加でも細胞の脂肪酸合成能を抑制した。また、カプリル酸のVLDL分泌抑制作用が示唆された。 (4) 卵黄抽出タンパク質の筋細胞分化に及ぼす影響 孵化後1日齢の残存卵黄採取して0.5M NaClにより卵黄抽出タンパク質を調製し、筋細胞の増殖および分化の様相を観察したところ、残存卵黄中には増殖もしくは分化誘導因子が存在する可能性が示唆された。
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