研究課題/領域番号 |
09876084
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩田 久人 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 (10271652)
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研究分担者 |
数坂 昭夫 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (00002113)
藤田 正一 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (10143314)
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キーワード | イルカ / クジラ / アザラシ / 環境汚染 / 複合汚染 / 有機塩素化合物 / 有機スズ化合物 |
研究概要 |
産業社会の発達とともに、環境中に排出される化学物質の量および種類は急速に増加している。これに伴い、野生生物は数多くの化学物質に慢性的に曝される状況にある。スナメリやゼニガタアザラシに代表される沿岸棲息性の水棲哺乳類は近年個体数が著しく減少しており、環境汚染物質の長期暴露による生体影響が懸念されている。この場合、環境汚染物質の複合汚染による生体影響は、単一物質の毒性から想像する以上に深刻化している可能性がある。そこで今年度は、環境汚染物質による複合暴露の影響を見るために、まず海棲哺乳類の複合汚染の実態を把握する研究を実施した。 試料として、北太平洋・インド洋から集めたイルカ・クジラ・アザラシを用い、これらを化学分析に供した。 分析に供したすべてのイルカ・クジラ・アザラシから、HCB・HCH・DDT・クロルデン化合物・PCBが検出された。なかでもDDTとPCBの濃度は相対的に他の化合物より高かった。さらに、PCB成分の中でも強毒性であると言われているノンオルソ体やモノオルソ体のコプラナーPCBも同時に検出された。また、これら動物の肝臓の有機スズ化合物を分析したところ、瀬戸内海のスナメリで最高10,000ng/g(湿重当たり)ものブチルスズ化合物が検出された。この濃度は、これまで報告されてきた汚染レベルの最高値であった。 以上のことを考慮すると、有機塩素化合物や有機スズ化合物による海棲哺乳類の汚染が毒性影響の懸念されるレベルで存在しているという可能性は否定できない。したがって今後は、両化合物を用いた毒性実験を行い、それらの複合汚染の影響を把握する必要がある。
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