研究課題/領域番号 |
09876092
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
道家 紀志 名古屋大学, 農学部, 教授 (80023472)
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研究分担者 |
吉岡 博文 名古屋大学, 農学部, 助手 (30240245)
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キーワード | 局部的オキシダティブバースト / 全身的オキシダティブバースト / 活性酸素生成反応 / 植物の全身的ストレス応答 / 植物の全身的シグナル伝達 / エリシター刺激 / 過酸化水素 / ジャガイモ組織 |
研究概要 |
微生物の感染、異物の侵入、傷害刺激などを植物個体の一部が受けると、直接刺激を受けた組織のみならず全身的に代謝変動と物質生産が速やかに起こる。刺激を受けた直後の組織では、急速な活性酸素生成反応の高揚現象(オキシダティブバースト:OXB)を発見しているが、最近、局部的なOXB誘導が全身的なOXBを誘導する現象を見いだした。これは、植物のストレス応答における新規な全身的シグナル伝達現象である。本研究では、ジャガイモ塊茎組織および複葉ならびにタバコ植物の葉および個体を用い、局部的OXB誘導機能物質(菌体エリシター)の局部的な刺激処理が全身的OXBを誘導する現象を2種の活性酸素生成反応測定方法(ルミノールを介した化学発光測定および組織外シトクロムcのSOD感受性還元活性の測定)で解析し、次の結果を得た。(1)加齢したジャガイモ塊茎の輪切りスライス(厚さ1cm)の側壁の一部にエリシターを処理すると、切断面上では、処理部近辺から活性酸素生成反応が放射状に展開した。(2)上端と下端を茎軸に垂直に切断し、加齢した塊茎スライス(厚さ3.5cm)の下端切断面にエリシター刺激を加えると、10数分のラグタイムを経て、上端切断面に活性酸素生成反応が分散した点として始まり、そこを中心に全面に展開した。(3)局部的OXBの阻害剤(Ca^<2+>、Ca^<2+>チャンネルブロッカーなど)およびカタラーゼやラジカルスカベンジャーの共存で誘導刺激を加えると、全身的OXBは起こらなかった。(4)全身的OXBの測定面を局部的OXBの誘導阻害剤や活性酸素スカベンジャーで処理すると全身的おXBは出現せず、活性化の過程は局部的OXBと類似したシステムで起こるものと推定された。(6)ジャガイモの複葉とタバコ植物で、葉へのエリシター処理で、全身的OXB誘導シグナルが、葉脈、葉柄および茎を経由し、葉から茎、茎内および茎から葉へと、転移することを示した。
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