研究概要 |
細胞膜ミクロドメインの局在について静的側面と動的側面の二つについて検討を試みた.静的側面についてはNa^+依存糖輸送体SGLT1,糖輸送体GLUT5,H^+依存ペプチド輸送体PepT1などについて,特異抗体を用いてその上皮細胞において頂部細胞膜に局在するのを示した。糖輸送体GLUT1は基本的には基底側壁部に局在したが,細胞頂部の刷子縁の付根も陽性であり,この部位が頂部細胞膜中のミクロドメインであるのが示唆された.一方動的側面については,水チャンネル蛋白のアクアポリン(AQP)に注目しておこなっている.(AQP5)に対する抗体を部分ペプチドを合成して作製し,ラット唾液線(顎下腺,舌下腺,耳下腺)や涙腺においてイムノブロットにより特異性を確認した.この抗体を用いて唾液腺標本を蛍光抗体法により染色すると,細胞間の分泌細管を含む腺房上皮細胞の腺腔部が陽性であった.閉鎖帯特異的な蛋白であるオクルジンとの二重標識の共焦点レーザー顕微鏡による光学的断層像と,三次元再構築像の解析によりAQP5は閉鎖帯により周囲を囲まれた腺房上皮細胞の頂部細胞膜ドメインにほぼ一様に存在するのが判明した.さらに詳細な局在は,免疫電顕法により検討中である.唾液腺細胞の分泌時における頂部細胞膜の動態とミクロドメインの存在については,分泌刺激実験により多量の細胞内分泌顆粒が頂部細胞膜と融合する過程を観察することにより可視化することができると考えられる.そこでイソプロテレノール刺激時におけるAQP5の分布について共焦点顕微鏡により解析が進行中である.
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