本研究では、PC12細胞のアポトーシス過程におけるリソゾームプロテアーゼの機能解析を生化学的、免疫組織化学的手法を用いて行ってきた。 PC12細胞を無血清培地で培養すると早期からカテプシンBの細胞内活性が上昇し、またautophagic vacuolesの増加がみられた。さらにアポトーシス関連のプロテアーゼであるcaspase3の活性化も同様にみられた。そこで、プロテアーゼの制御機構を検索するためにそれぞれのプロテアーゼの特異的阻害剤を用いた実験を行った。caspase3の特異的阻害剤であるAC-DEVD-CHOを添加した培地で同細胞を培養すると細胞はアポトーシスを回避し生存したが、同時にカテプシンBの特異的阻害剤であるCA074を添加して培養することによりアポトーシスで細胞が死滅した。また、CA074の代わりにカテプシンBのアンチセンスヌクレオチドを添加して培養しても同様な結果を得ることができた。さらに、アスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤であるpepstatinAやカテプシンDのアンチセンスヌクレオチドを添加することによりアポトーシスを回避できた。上記の実験をラット後根神経節から採取した初代培養神経細胞を用いた場合も同様な結果を得ることができた。これらの結果より、アポトーシスにはリソゾームプロテアーゼによる独自の制御機構が存在すると考えられる。 そして現在、リソゾームプロテアーゼによって活性化され細胞死を惹起する基質の検索に着手し、また他のプロテアーゼとのプロッセシングの関連性を検討している。
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