本年度の研究においては、まずマウス初期胚盤胞において特異的に発現する新規蛋白質キナーゼ(以下キナーゼ)の検索・同定を試みた。Jackson Laboratory(USA)より供与された初期胚盤胞特異的cDNA libraryを鋳型とし、キナーゼにおいて良く保存されている亜領域VIB、IXに対応するdegenerate primersを用いてPCR法を行い、キナーゼ亜領域VIB、IX間の塩基配列を増幅後その塩基配列を決定した。その結果、計14種のキナーゼを同定することが出来たが、いずれも既存のキナーゼであった。(その内訳は、PDGF受容体をはじめとする5種の受容体型チロシキナーゼ、Srcをはじめとする5種の非受容体型チロシンキナーゼ、及び4種の細胞周期制御に関わるセリン・スレオニンキナーゼである。)本研究を行っている過程において、我々はショウジョウバエの生殖細胞成立に関わる新規核内セリン・スレオニンキナーゼDmnkの同定に成功した。そこで、Dmnkのマウス相同分子を検索・同定する目的で、熊本大学阿部博士から供与を受けたライブラリーを用い、まず胎生13.5日のマウス胚より単離された始原生殖細胞(PGC)特異的cDNAライブラリーを鋳型とし、上述の手法を用い、PGCにおいて発現する新規キナーゼの検索を行った。その結果現在までに、17種のキナーゼを同定することが出来た。これらのキナーゼの内、15種は既知のキナーゼであったが、2種のキナーゼは新規のキナーゼであることが明らかとなった。今後これら2種のキナーゼ遺伝子のcDNA全長のクローニング、詳細な発現解析を行う一方、さらに新規キナーゼのスクリーニングを継続することでDmnkのマウス相同分子の検索・同定を行いたいと考えている。
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