平成9年度:カーボン・ファイバー電極法を試作して活性物質の放出反応動態を明確にするとともに、モデル標本を開発しADP受容体の特性を解明した。 1.放出物質の同定および放出機序の解明とカーボン・ファイバー電極法の試作:巨核球や血小板の細胞質にはセロトニンやADPを含む顆粒(濃染顆粒)があり、刺激により放出されている。マウス巨核球をwhole-cell法にて記録すると、自発シナプス電流の如き膜電流が観察された。トロンビンやフォルボールエステルを巨核球に与えると、膜電流応答の出現頻度は著増し、放出物質の一部はカーボン・ファイバー電極により酸化反応電流としてreal-timeに検出された。 2.モデルとしての株化細胞の開発およびADP応答の解析: ヒトの血小板系細胞における血小板特異受容体(P2x-R)の動態を解明するため、白血病患者から樹立された、巨核球系cell line(Meg-01)を用いて調べた。40uMADPをMeg-01細胞にY-チューブより投与し、whole-cellの誘発電流をpatch電極にて記録した。培地(10%FCS添加のRPM1640)にPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate;10nM)を加えて分化を誘導した場合は無添加の場合に比べて約2倍の内向き電流が誘発され、トロンボポエチン(thrombopoietin;100ng/ml)で分化を誘導した場合は約3倍の内向き電流が誘発された。両者を同時添加すると約6倍の大きさになった。ヒトの造血系においても、巨核球の分化・成熟に伴いこれらの受容体が発現し、血小板に組み込まれると考えられる。
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