研究概要 |
平成10年度: 1. ヒトの巨核球系細胞での解析: 血液系細胞はヒトと実験動物とで,刺激に対する反応や基本機能が微妙に異なることが有りうる。前年度に明らかになったプリン2X型受容体の存在やセロトニンとADPの放出をヒト由来巨核球系cell lineを用いて調べた。調べたcell lineのうち白血病患者から樹立された、cell line(Meg-01)において血小板特異受容体(P2x-R)の存在が確認された。 RPM1640培地(10%FCS添加)に生理的な分化因子であるトロンボポエチン (thrombopoietin)を加えると約3倍のADPへの反応が誘発された。実験的な分化促進因子であるphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)を加えた場合は無添加の場合に比べて約2倍のADPへの反応が誘発された。巨核球の分化・成熟に伴いこれらの受容体が発現し、血小板に組み込まれることがマウスおよびヒトの巨核球系細胞で明確に示された。 2. カーボン・ファイバー電極法の改良と放出物質制御機構の解析: 巨核球や血小板の細胞質にある濃染顆粒(セロトニンやADPを含む顆粒)は、生理的刺激により放出される。骨髄から分離した巨核球をwhole-cell法にて記録すると、スパイク状の膜電流が頻繁に発生する事が観察された。ADPやトロンビン(生理的刺激物質)ないしフォルボールエステル(実験的刺激物質)を巨核球に与えると、膜電流応答の出現頻度は増し、これら放出された物質は改良したカーボン・ファイバー電極(先端経5um)によりスパイク状の酸化反応電流として存在が確認された。
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