研究課題/領域番号 |
09877014
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研究機関 | (財)神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
近藤 宜昭 財団法人 神奈川科学技術アカデミー, 冬眠制御プロジェクト, 研究員 (40270699)
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研究分担者 |
関島 恒夫 財団法人 神奈川科学技術アカデミー, 冬眠制御プロジェクト, 研究員 (10300964)
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キーワード | 冬眠 / シマリス / 冬眠特異的タンパク質(HP) / 脳脊髄液 / 血液-脳脊髄関門 / 脈絡叢 |
研究概要 |
本年度は、HP(HP-20、-25、-27のタンパク質複合体にHP-55が会合した構造を持つ)の脳脊髄液中での構造と、血液-脳脊髄液関門と考えられている脈絡叢を介してのHPの輸送の可能性を解析した。 脳脊髄液中のHPの構造解析のためには、多量の脳脊髄液が必要となる。また、小動物であるシマリスの側脳室にカニューレを挿入し、麻酔下で脳脊髄液を採取するには、熟練と時間を要し、しかも、脳脊髄液中にHPが増加するのは、冬眠期間中(10月頃から翌年の3月頃まで)だけと限られている。このため、脳脊髄液採取可能な実験個体の作成、維持とその採取に多くの時間と労力を費やした。その結果集められた貴重なサンプルを解析した結果、血液からのHP分離に有用であったゲルろ過カラムは、脳脊髄液中のHPを吸着し分離不可能なことが明らかになり、血中HPと異なる性質を持つことが分かってきた。分離可能なゲルろ過カラムを選定し、native-、SDS-PAGE、western blottingを用いた解析から、脳脊髄液中のHPは、会合体からHP-55が解離した構造に変化していることが明らかになった。さらに、抗HP複合体抗体を用いた免疫組織化学的手法により、血液-脳脊髄液関門と考えられている脈絡叢に陽性反応が検出され、血中HPは冬眠期特異的に脳内へ輸送されることが示唆された。 脈絡叢でのHP取り込み実験を行うため、脈絡叢標本の作成方法とそれを用いた生理実験系を検討した結果、スライス標本、摘出標本ともに作成後、経時的に細胞形態の崩壊が観察された。何れも、1時間以上のincubationにより、多くの細胞に形態的悪化が見られることから、これらの方法は摘出した脈絡叢の維持には適さないことが示された。今後、細胞あるいは組織培養などの他の方法の検討が必要であろう。
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