ミトコンドリアタンパク質の大部分はサイトソルより輸送されるが、それらの多くはN末端側にプレ配列を持つ前駆体として合成される。輸送されたタンパク質はミトコンドリアのマトリックスに存在するプロテアーゼによるプロセシングを受け、成熟タンパク質となる。今回我々は、ミトコンドリアへのタンパク質移行のメカニズムを単一細胞レベルで解析するために、Aequorea victoria由来のgreen fluorescent protein(GFP)のN末端側にヒト・オルチニントランスカルバミラーゼ(OTC)のプレ配列を持つ融合タンパク質(pOTC-GFP)を発現するプラスミドを構築した。これをCOS-7培養細胞内へ導入し、蛍光顕微鏡による観察を行ったところ、ミトコンドリアの形態と同様な糸状の蛍光が観察された。また、移行したpOTC-GFPは本来のGFPと同じ分子量であることから、pOTC-GFPは移行の際にプロセシングを受けていることが示された。脱共役剤存在下では移行効率の著しい低下が観察された。さらに、マイクロインジェクション法を用いて、このプラスミドを培養細胞の核内に直接導入することにより、導入後約3時間でミトコンドリア様の蛍光が観察された。この系はタンパク質のミトコンドリアへの移行過程を単一細胞内でリアルタイムに観察するのに有用な系であると期待される。
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