研究概要 |
1.胃MALTリンパ腫53例(低悪性度40例,高悪性度13例)について臨床病理学的研究を行った。すべての症例でHelicobacter pylori感染が証明され、低悪性度MALTリンパ腫は平均57.6才、高悪性度MALTリンパ腫は平均65.5才であり、高悪性度化するのに10年弱を要すること、MALTリンパ腫は非MALTびまん性大細胞型に比し、より広い範囲の胃壁に浸潤し大弯側を侵しやすいことを明らかにした。また高悪性度化にはp53,BCL-6,RAS,CD44変異型の過剰発現が関与していることを証明した。H.pylori除菌療法後の変化を検索し、低悪性度MALTリンパ腫は約8割が除菌療法に反応して組織学的に病変が証明されなくなるが、このようなものでも一部は免疫組織学的に単クローン性が証明されることを明らかにした。 2.MALTリンパ腫胃壁リンパ濾胞芽中心の濾胞樹状細胞(FDC)は、抗H.pylori家兎抗体及び抗ヒトHSP60単クローン抗体で免疫染色されるが、リンパ節のFDCは反応しないことを証明し、FDC上に発現されるHSP60がMALTリンパ腫の病因に関与している可能性を示した。 3.4週令の3種類の近交系マウス(BALB/c,C3H/He,C57BL/6)に、H.pyloriを胃内1回投与した後、宿主の免疫反応と胃の炎症強度の相関性について検討した。IL-2を除いてサイトカイン産生が弱かったBALB/cマウスでは胃の炎症は殆どみられず、IL-2,IL-4,TNFα,インターフェロンγすべての産生がみられたC57BL/6とC3H/Heでは、Th1,Th2反応の優位性とは関係なく、それぞれ63.6%と33.3%に炎症が惹起された。
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