本研究の経過中にも、わが国のQ熱病原体Coxiella burnetti(Cb)の広い拡散が、各地の不明熱患者等の検討を通じて確実視されるに到っているが、未だ病原維持の底辺を成す節足動物がどのように関わるか明らかでないのも事実で、この研究ではその局面の調査を行なって来た。 平成9〜10年度の間に、北海道(道央)・東北(宮城・福島県)・関東(群馬・埼玉県)・中部(長野・岐阜・石川・福井県)・中国(兵庫・岡山県)・四国(徳島・香川県)・九州(大分・宮崎・鹿児島県)および南西諸島へ現地出張もしくは地元関係者の協力で、試料(野鼠および寄生節足動物など)の捕集に努めた。 得られた材料のうち、岐阜県の牧場のマダニは、そこが牧牛のCb濃厚感染地であったことから、微生物分野と共同でPCRにてCbの検出を行ない、有意な陽性率を証明した。一方、我国の北から南まで任意の5ヶ所でマダニにつきPCRスクリーニングした結果では、極めて低率に終わった。現在、新たなPCRプライマーにて多数残った材料を検査継続中であるが、恐らくCbの分布というのは全国所々にフォーカスを形成した形と思われ、今後は個々のフォーカスにおいて維持サイクルを解析するのが早道と判断される。いずれにしろ、節足動物の介在性を、地理病理学的な面から再検討中である。
|