研究概要 |
Rhabditis pseudoelongataを用いて動物実験代替in vitroモデル系(抗寄生線虫薬の作用研究ないし寄生線虫の分子生物学的・遺伝学的研究のモデル)の確立を目指して本研究を開始した。この虫と同様にin vitroで増殖し、同様の研究モデルとなっている自由生活線虫としてはCaenorhabditis elegans がある。R.pseudoelongataは本来は腐食性の自由生活をしているが、患者や動物の糞便からの検出、ウサギ、イヌなどに対する実験的感染の報告があることから、条件寄生性と考えられる。そこで、今年度は先ず、動物の腸管における本線虫の寄生性を確認し、宿主側における寄生条件を明らかにする予定であった。本来ならば、ウサギ、イヌなどについての追試からはじめるべきであった。しかし、将来の遺伝子レベルの研究を念頭においていたため、遺伝的背景のしっかりしていて遺伝的免疫抑制動物であるヌードマウス(T-細胞機能欠損マウス)、SCIDマウス(T-,B-細胞機能欠損マウス)などにおける感染の成立の有無の検討から開始した。動物実験施設におけるこれらの動物維持の環境設定、動物の入手に手間取り、結果として実験系の準備が漸く整った段階で、十分な結果を得るには至らなかった。次年度には、イヌやウサギなどにおける追試と今回準備できた免疫抑制マウスにおいて研究を進め、動物側における寄生条件を解明したい。また、今年度に予定していなかった実験として、in vitroにおける培養条件の研究を行った。これまで寒天平板で培養していた本虫種を液体メディウムで培養し、NIメデイウムほかの培地でも培養可能なことを明らかにした。また、NIメディウムで1虫ずつ飼育する方法を考案し、生活環が3日であることを確認することができた。この方法で次年度以降、生活環の詳細や栄養条件などを解明できる見込みが得られた。
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