1997 年度実績報告書

プログアニールによるマラリア化学療法の効果に関する人間及び原虫の遺伝因子の研究

研究課題

研究課題/領域番号	09877056
研究機関	東京女子医科大学
研究代表者	金子明東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (60169563)
研究分担者	武地美保東京女子医科大学, 医学部, 助手
キーワード	マラリア / サイクログアニール / 熱帯熱マラリア / マラリア化学療法 / チトクロームP450 / CYP2C19 / プログアニール / バヌアツ・
研究概要	近年、クロロキンに対する熱帯熱マラリア耐性株出現という状況において、proguanil(PRG)が予防ないし治療薬として見直されてきた。PRGは“prodrug"であり、人間の体内でcycloguanilに代謝されると、抗マラリア作用が発揮されると考えられている。この代謝に関与しているのが肝cytochrome P450のisoenzymeであるCYP2C19である。この酵素はPRG以外にomeprazole,diazepam,mephenytoinなどの重要な薬剤代謝に関与しているが、この酵素活性を十分に持たない者がpoor metabolizer(PM)である。PMの比率には人種間差があり、これまで白人では約3%、アジア人では13-23%と報告されていた。この遺伝学的背景としてCYP2C19wt(野生型)に対するm1およびm2の2種の変異型遺伝子が見出されており、前者は白人および日本人PMの約80%を説明するのに対し、後者は日本人にしか見つかっていなかった。今回バヌアツのメラネシア人におけるm1およびm2の頻度について調査する為に、タナ島およびマラクラ島においてマラリア調査を行い、493名の島民よりフィルターペ-パ-へ採血した。DNAを抽出し、de Moraisら(1994)の方法でPCRにより解析した結果、極めて高い両変異遺伝子頻度が検出された。すなわちml,m2の頻度はそれぞれ0.708(698/986),0.133(131/986)であり、少なくとも一つのwtを持っていたのはわずか145名のみであった。遺伝子型の分布は、Hardy-Weinbergの式に従い推定される分布に極めてよく一致していた。これらの結果は、348名(70.6%)がPMであることを示唆するものである。メラネシア人はその人類学的起源よりモンゴロイドに属すると考えられ、m2が検出されたことは不自然でないが、非常に高いml頻度の理由は不明である。この集団におけるPRGの効果については重要な意義があるものと思われる。

研究成果

(8件)

すべてその他

すべて文献書誌 (8件)

[文献書誌] Kaneko, A.: "High frequencies of CYP2C19 mutaions and poor metabolism of proguanil in Vanuatu" The Lancet.349. 921-922 (1997)
[文献書誌] 金子明: "目で見るマラリア対策(3)マラリアの化学療法" Medicina. 34(6). 1193-1199 (1997)
[文献書誌] 金子明: "目で見るマラリア対策(4)南太平洋バヌアツの人類とマラリアおよびその対策" Medicina. 34(7). 1413-1422 (1997)
[文献書誌] 金子明: "Global agendaとしてのマラリア:バヌアツにおけるマラリア対策と化学療法" 臨床病理. Vol.45補冊. 43 (1997)
[文献書誌] Kaneko, A: "PROGUANIL EFFICACY IN MALARIA PATIENTS FROM VANUATU WITH HIGH FREQUENCY OF CYP2C19 MUTATIONS" 日本熱帯医学会雑誌. 第25巻増刊号. 113 (1997)
[文献書誌] Kaneko, A: "High frequencies of CPY2C19 mutaions indicating poor metabolism of proguanil in Vanuatu" Parasiotology International.Vol.46,Supplement. 71 (1997)
[文献書誌] Kaneko, A.: "Human genetic diversities in relation to epidemiology and control of malaria in the Vanuatu Archipelago. In:Ishii,A. (ed.), Malaria research in Solomon Islands." Inter group (in press), (1998)
[文献書誌] Kaneko, A: "Parasitic Infections. In:Page,C.V. et al. (eds.), Integrated. Pharmacology." Mosby, 461-477 (1998)

1997 年度 実績報告書

プログアニールによるマラリア化学療法の効果に関する人間及び原虫の遺伝因子の研究

研究代表者

金子 明 東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (60169563)

研究成果

[文献書誌] Kaneko, A.: "High frequencies of CYP2C19 mutaions and poor metabolism of proguanil in Vanuatu" The Lancet.349. 921-922 (1997)

[文献書誌] 金子 明: "目で見るマラリア対策(3)マラリアの化学療法" Medicina. 34(6). 1193-1199 (1997)

[文献書誌] 金子 明: "目で見るマラリア対策(4)南太平洋バヌアツの人類とマラリアおよびその対策" Medicina. 34(7). 1413-1422 (1997)

[文献書誌] 金子 明: "Global agendaとしてのマラリア:バヌアツにおけるマラリア対策と化学療法" 臨床病理. Vol.45補冊. 43 (1997)

[文献書誌] Kaneko, A: "PROGUANIL EFFICACY IN MALARIA PATIENTS FROM VANUATU WITH HIGH FREQUENCY OF CYP2C19 MUTATIONS" 日本熱帯医学会雑誌. 第25巻 増刊号. 113 (1997)

[文献書誌] Kaneko, A: "High frequencies of CPY2C19 mutaions indicating poor metabolism of proguanil in Vanuatu" Parasiotology International.Vol.46,Supplement. 71 (1997)

[文献書誌] Kaneko, A.: "Human genetic diversities in relation to epidemiology and control of malaria in the Vanuatu Archipelago. In:Ishii,A. (ed.), Malaria research in Solomon Islands." Inter group (in press), (1998)

[文献書誌] Kaneko, A: "Parasitic Infections. In:Page,C.V. et al. (eds.), Integrated. Pharmacology." Mosby, 461-477 (1998)

1997 年度実績報告書

金子明東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (60169563)

[文献書誌] 金子明: "目で見るマラリア対策(3)マラリアの化学療法" Medicina. 34(6). 1193-1199 (1997)

[文献書誌] 金子明: "目で見るマラリア対策(4)南太平洋バヌアツの人類とマラリアおよびその対策" Medicina. 34(7). 1413-1422 (1997)

[文献書誌] 金子明: "Global agendaとしてのマラリア:バヌアツにおけるマラリア対策と化学療法" 臨床病理. Vol.45補冊. 43 (1997)

[文献書誌] Kaneko, A: "PROGUANIL EFFICACY IN MALARIA PATIENTS FROM VANUATU WITH HIGH FREQUENCY OF CYP2C19 MUTATIONS" 日本熱帯医学会雑誌. 第25巻増刊号. 113 (1997)