研究概要 |
感染モデルの作成:無菌マウス(IQI/jic,8w,メス)に腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7006株を5X10^8cfu/0.5mlを経口投与することにより、感染モデルを作成した。投与4日目以降7日目までにすべてのマウスが斃死した。糞便中のEHECの菌数は感染48時間後から約10^9cfu/g程度の菌数を維持した。また、逆受身ラッテクス凝集反応による大腸菌ベロトキシン検出用キットを用いて感染マウスの糞便懸濁液の毒素量を測定したところ、ベロトキシン1(VT1),ベロトキシン2(VT2)ともに検出された。感染48時間後の毒素量はそれぞれVT1が4.5±0.6、VT2が7.3±0.5であった。感染4日目にはさらに増加し、VT1が7.3±0.6、VT2が10.7±0.6であった。解剖所見からは出血性腸炎のような病態が認められないことよりマウスの死因については今後十分な検討を必要とするが、死亡時期と毒素量のピークが一致し、四肢の痙攣を伴い死亡した様子などから毒素による直接的な脳症が考えられた。無菌マウスに、EHEC感染を成立し得たことにより、以下のプロバイオテクスやワクチンの予防効果の検討を行うモデルとして応用できると考えられる。 プロバイオテクスを用いた予防効果の検討:無菌マウスを用いたEHEC感染モデルにプロバイオテクスとしてClostridium butyricumMIYAIRI 588株を前投与し、その予防効果を検討した。C.butyricumを1x10^8cfu/0.5mlを経口投与し単独定着させた後、このマウスにEHECを同様の方法で投与した。観察期間13日中マウスの死亡は認められず、EHEC菌数は6.0x10^6-4.0x10^7と単独感染と比べ有意に低下した。また菌数低下にともない毒素量も減少していた。以上のことからEHEC感染の予防としてC.butyricum MIYAIRI 588株は有用であると考えられる。
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