慢性関節リウマチ(RA)は、過剰に産生された多彩なサイトカインにより複雑なサイトカインネットワークが形成され、関節滑膜の慢性炎症や関節破壊が引き起こされる疾患である。 我々は、ヒトパルボウイルスB19(B19)が活動期RA患者の関節滑膜組織のT細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞内に感染性を有した状態で存在し、感染細胞の炎症性サイトカインの発現を亢進させることを明らかにした。B19の感染能およびサイトカイン誘導能はB19殻蛋白質VP1に対する抗体によって阻害された。また、サイト力イン誘導能はB19非構造蛋白質NS1のmRNAを選択的に切断するリボザイムによっても阻害された。 NS1が転写活性化因子として炎症性サイトカインの産生に影響を与えるかどうかを調べるため、NS1発現細胞を作成した。NS1は細胞毒性を示すため、誘導発現ベクターに組み込んだNS1遺伝子をマクロファージ系株化細胞に安定導入し、NS1誘導発現株を樹立した。リアルタイムモニタリングRT-PCRによってこの細胞のmRNAの定量を行い、NS1の発現に伴ってTNF-αの産生が亢進することを明らかにした。 TNF-αがサイトカインネットワークの最上流に位置すると考えられることから、NS1発現マクロファージにおけるTNF-αの過剰産生はRAの発症あるいは病態維持におけるNS1の役割を示唆する。in vivoにおけるNS1の機能を明らかにする目的で、NS1遺伝子トランスジェニックマウスを作成中である。
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