アポトーシスに関連した細胞内シグナル伝達系は部分的に明らかになりつつある。私達は既にアポトーシスのセカンドメッセンジャーであるセラミドは、ICEファミリープロテアーゼの一員であるCPP32を活性化することによって核の形態変化を誘導していることを見出した。本研究ではセラミドを介したアポトーシスシグナル伝達機構をさらに解析した。抗Fas抗体によるアポトーシスに抵抗性の変異株であるJurkatFRはセラミドによるアポトーシスにも耐性であった。ウェスタンブロットではCPP32の発現量は野生型と同程度であったが、抗Fas抗体、セラミド処理後のCPP32の限定分解、および蛍光色素を基質とした酵素活性は有意に低下していた。さらにアポトーシス調節因子であるbcl-2、bcl-x、baxの発現を検討したところ、JurkatFRでは明らかなbcl-xLの高発現を認めた。よってJurkatFRの異常はセラミド-ICE様プロテアーゼ系にあり、かつbcl-xLがこの系を抑制する可能性が示唆された。次に、アポトーシスの初期マーカーとして特徴的であるホスファチジルセリン(PS)の細胞表面への表出にセラミドが関与するかを検討した。抗Fas抗体によるPSの表出はCPP32阻害剤であるAcDEVD-CHOで抑制されたため、PS表出にはCPP32が必要であると考えられた。しかし、セラミドによるアポトーシスではPS表出はわずかであったため、PS表出にはCPP32の活性化のみでは不十分であり、スフィンゴミエリン-セラミド系以外の経路が重要であると考えられた。
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