研究概要 |
担癌宿主や慢性肝炎などの慢性疾患患者において癌やウイルス特異的な免疫応答の低下が疾患の難治性に深く関わっている可能性がある。このような宿主の免疫応答を統御している機構のうちで抗原提示細胞による抗原特異的T細胞の感作は、その後の免疫応答の強さや性質(抗炎症や抗体作成)等の方向性決定に重要な意味を持つ。本研究においてはこの1年で、ヒト末梢血由来の抗原提示細胞のうち最も強力とされる樹状細胞の分離法や体外活性化法につき予備的研究を施行した。これまでのところ、末梢血リンパ球をGM-CSFやIL-4で刺激することにより、表面にCD83を発現する細胞を得た。このmRNAをRT-PCRでcDNAとしてクローニングベクターに組み込んだ。さらにバキュロウイルスに組み換えるためのベクターに組み換え中である。それに末梢血樹状細胞同定のための明白な抗原を入手し、さらに抗体を作成して得られる細胞分画につき抗原提示機能を解析する予定である。また粗分画を用いての実験としてヒト末梢血リンパ球をプラスチック付着細胞と非付着細胞に分け、それぞれの分画を樹状細胞の誘導に有効とされるサイトカイン(GM-CSF,IL4等)で刺激して宿主が非感作の抗原で刺激してナイーブT細胞における抗原特異的な増殖反応を確認した。例えばC型肝炎に未感作の宿主リンパ球をこのサイトカイン活性化樹状細胞でC型肝炎ウイルス関連抗原とともに刺激したところ、未感作宿主のリンパ球から明らかに有意な増殖反応が認められた。これはサイトカイン未刺激な抗原提示細胞分画では認められずin vitroでナイーブT細胞が抗原特異的に活性化されたことを示唆していると思われた。現在この反応がartificialな反応でないことや、サイトカイン活性化樹状細胞の分画や宿主における機能の差違(担癌宿主や慢性疾患宿主における機能変化)等につき、従来の報告と対比して検討中である。
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