強皮症では、DNA複製転写に関わる重要な核内抗原であるトポイソメラーゼIに対する自己抗体が特徴的である。このトポイソメラーゼIに対する自己免疫応答と強皮症の病態との関係を明らかにするために、このトポイソメラーゼIに対する自己免疫応答を誘導した動物モデルを作成し、解析することをめざしている。 今年度は、この自己免疫応答を誘導するのに用いるトポイソメラーゼI抗原の発現精製を行った。マウスのトポイソメラーゼIを規定する部分CDNAは、創価大学工学部安藤俊夫教授より供与されてた。しかし、この二つのトポイソメラーゼ部分cDNAのうち、二カ所にクローニングに伴うと考えられる遺伝子変異が見出され、N末側部分cDNAを改めてクローニングし直した。これをC末側cDNAと連結し全長cDNAを得ることに成功した。当初大腸菌を用いての発現をめざしたが、大腸菌での発現は不溶性になりまた蛋白分解を受けた。これは、トポイソメラーゼIは、かなり分子量の大きな核酸結合蛋白である為であろうと推察された。そこでより可溶性蛋白を発現しやすいとされるバキュロウィルス発現系を用いることにし、可溶性全長蛋白の発現に成功した。可溶性であるので、この蛋白を精製し、実際にトポイソメラーゼI活性を持つことを確認することができた。 他の自己抗原系を用いて、自己免疫寛容を克服して自己免疫応答を誘導するDNA免疫などの系の確立にも成功しているので、これらの知見を生かして今後、この抗原を用いての自己免疫応答の誘導に着手する予定である。
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