研究概要 |
研究目的:p21 ras活性化阻害剤の腫瘍発生阻害効果および炎症抑制効果について,消化管由来腫瘍細胞および炎症性腸疾患モデルを用いて検討し,これらの薬剤を炎症性腸疾患の治療,炎症性腸疾患における発癌のchemopriventionに応用することを目的とする。 平成10年度の研究実績 平成10年度は, Ki-rasを遺伝子導入したfibroblast(NIH/3T3)cell,およびKi-rasのmutationが明らかとなっているcell lineを用いて下記の結果を得た。 (1) p21 ras活性化に関与するFarnesyl Protein Transferase(FTPase)阻害剤であるfalnesylamineが,上記細胞のp21のfamesyl化を酵素特異的に阻害すること (2) falnesylamineがKi-rasでtransformされた上記細胞に対してcytotoxicに作用するのに対し,正常細胞はこの薬剤に対して抵抗性であること (3) これらの細胞に対するcytotxicityは,DNAのfragmentationを伴うapoptosis誘導するであることを見出した。 これらのことから FTPase阻害剤であるfalnesylamineは,rasのmutationを伴う腫瘍のapoptosisを誘導し,しかも正常細胞に影響を及ぼさないchemoprivention reagentとして有望である可能性を見出した。 これらの研究結果は,1998年 Molecular Carcinogenesis誌に掲載された。
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