研究概要 |
本研究においてはp21ras活性化阻害剤の腫瘍発生阻害効果および炎症性抑制効果について,消化管由来腫瘍細胞および炎症腸疾患モデルを用いて検討し,これらの薬剤を炎症性腸疾患の治療,炎症性腸疾患における発癌のchemopriventionに応用することを目的とした。これまでin vitroの研究を行ってきた。その結果,Ki-rasを遺伝子導入したfibroblast(NIH/3T3)cell,およびKi-rasのmutationが明らかとなっているcell lineを用いて下記の結果を得た。 (1)p21 ras活性化に関与するFarnesyl Protein Transferase(FTPase)阻害剤であるfalnesylamine(FA)およびlong cahin fatty amineのひとつであるoleylamine(OA)が,上記細胞のp21のfarnesyl化を酵素特異的に阻害すること (2)FA,OAがKi-rasでtransformされた上記細胞に対してcytotoxicに作用するのに対し,正常細胞はこの薬剤に対して抵抗性であること (3)これらの細胞に対するcytotxicityは,DNAのfragmentationを伴うapoptosis誘導するであること (4)細胞内シグナル伝達系の解析により,これらがMAPK、JNKのキナーゼを介したシグナル伝達系を介してapoptosisを誘導していること を見出した。 これらのことから,FTPase阻害剤であるFA,OAは,rasのmutationを伴う腫瘍のapoptosisを誘導し,しかも正常細胞に影響を及ぼさないchemoprevention reagentとして有望である可能性を見出した。現在,動物実験および,炎症性腸疾患発癌を想定した大腸癌由来細胞における検討を行っている。
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