研究概要 |
食道腺癌,Barrett腺癌,ならびにBarrett上皮について各種ムチンコア蛋白,p53,酸性糖鎖抗原の発現を検討し,これらの癌とBarrett上皮との関連を探った.過去5年間の下部食道腺癌7例(Barrett腺癌4例を含む),非癌食道胃接合部4例,およびBarrett上皮生検16例について免疫組織学的に検討した. 1.Barrett上皮ならびに腺癌に比較的特異的に発現されるムチンはMUC1,MUC2で,硫酸化糖鎖・シアル酸化糖鎖の発現も高頻度であったため,これら4つの抗原を選択し検討を進めた. 2.硫酸化糖鎖はBarrett上皮に50%,腺癌では100%に発現がみられた.シアル酸化糖鎖は各々44.7%,57.2%,MUC1は各々79%,42.9%,MUC2は各々33.3%,42.9%であった. 3.これら糖鎖とムチンコア蛋白の発現の関連性を連続切片を用い検討するとMUC2-apomucinとシアル酸化糖鎖(sialylated N-acetyl galactosamine)の発現の一致率は89.5%であり,シアル酸化糖鎖のムチンコア蛋白はMUC2と推定された. 4.硫酸化糖鎖のコア蛋白は明かとならなかったが,Barrett上皮ならびにその悪性化病変である食道腺癌で高率に発現し,硫酸化糖鎖発現の点で胃における不完全型腸上皮化生(sulfomucin産生)からの腸型胃癌の発生に類似するものと考えられた.
|