研究概要 |
エンドトキシン肺損傷におけるMacrophage migration inhibitory factor(MIF)の役割を,抗MIF抗体を用いて検討した.[対象と方法]Sprague-Dawleyラット(雄,6〜8週齢,200〜300g)を使用した.非免疫兎IgG(5mg/kg)あるいは抗MIF抗体(3.9-8.3mg/kg)を腹腔内に前投与し,その2時間後にLPS(7mg/kg)を腹腔内投与した.この2群間でLPS投与4時間後と24時間後にそれぞれ肺組織と気管支肺胞洗浄(BAL)の比較検討をおこなった.[結果]1)免疫染色ラット気道上皮と肺胞マクロファージにMIFが存在していた.2)1肺胞あたりの好中球数はLPS投与4時間後、24時間とも、抗体投与群は非投与群(対照群)に比べて有意に減少した(抗体投与群4時間で1.20±0.09(mean±SD)、24時間で1.38±0.29に対し、対照群で4時間2.67±0.33、24時間2.79±0.27).3)肺組織MPO活性もLPS投与4時間後,24時間後とも、抗体投与群は非投与群に比べて有意に減少した(抗体投与群4時間で1.34±0.11(OD/min)、24時間で0.66±0.24に対し、対照群で4時間2.04±0.27、24時間1.34±0.11).BAL液中の総細胞数は2群間で有意差を認めなかった.一方、LPS投与4時間後のBAL液中の好中球比率は両群とも全く増加しなかった.しかし、24時間後では非投与群のBAL液中好中球比率は増加したのに対し、抗体投与群はその増加を明らかに抑制した.[結論]ラットのLPS急性肺損傷において、抗MIF抗体は肺への好中球遊走を比較的早期から抑制する.その機序の一部はおそらく、好中球遊走因子上昇の抑制を介したものであろう.次年度はこの点に注目し研究を続ける.
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