研究概要 |
炎症性cytokineの末梢神経系に対する影響を検討することを目的として,myeloperoxidaseに対するanti-neutrophil cytoplasmic antibody(抗好中球細胞質抗体)陽性血管炎(MPO-ANCA related vasculitis)患者で末梢神経障害の有無を臨床的に研究した. MPO-ANCAは炎症性cytokineと共軛して好中球を活性化し,血管壊死を惹起する.このためMPO-ANCA related vasculitisは炎症性cytokineによる臓器障害をきたす代表約疾患とされている. 神経学的診察で患者9例のうち5例に表在感覚鈍麻,6例に遠位優位の筋力低下を認めた.全例に末梢神経伝導検査異常を認め,針筋電図では神経原性変化を,腓腹神経組織ではpatchyな有髄神経線維密度の低下を認めた. polyneuropathy型4例,mononeuropathy型1例,混在型4例の末梢神経障害と判断した.MPO-ANCA related vasculitisでは高率に末梢神経障害をきたすことが示唆され,成因に炎症性cytokineの関与が考えられた. これまで炎症性cytokineによる末梢神経障害は注目されておらず,今後,作用機序の解明を進める方針である.
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