Rhoキナーゼは、ミオシンホスファターゼを燐酸化することによりその活性を阻害させると共に直接ミオシン軽鎖を燐酸化させ、平滑筋収縮を引き起こす新しい分子として注目されている。そこでin vivoにおけるRhoキナーゼの血管トーヌス制御に関する機能を検討するため、ラット頚動脈にRhoキナーゼの遺伝子の導入を試みた。ウシRhoキナーゼcDNAを用いて、その全長および触媒ドメイン領域を発現ベクターに組み込み、HVJリポゾーム法を用いて遺伝子導入を行った。2週間後に導入血管におけるこれら蛋白質の発現をウェスタンブロットにて検討したが、その十分な発現は認められず、今後さらに発現ベクターならびに遺伝子導入法等を改善し研究を続けていきたいと思っている。 そこで、Rhoキナーゼの血管トーヌス制御機構に関する検討を行う目的で、スキンドファイバー法を用いて検討した。Ca^<2+>(pCa=6.5)存在下にトライトンX-100処理ウサギ門脈スキンドファイバー標本にRho非依存性に活性を有するRhoキナーゼ触媒領域のリコンビナント蛋白質(CAT)を作用させたところ、CATは濃度依存性にミオシン軽鎖の燐酸化を伴った収縮を引き起こした。また、Ca^<2+>-カルモデュリン非存在下でもCATは同様にミオシン軽鎖のリン酸化を介する収縮を惹起させた。以上より、RhoキナーゼはCa^<2+>非依存性に血管平滑筋収縮を引き起こさせる分子で、アゴニスト刺激時などに認められる血管平滑筋収縮のカルシウム感受性亢進においてRhoキナーゼを介したシグナル伝達機構が関与していることが疑われた。
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