1.ラットの培養心筋細胞を用い、リン酸カルシウム法にて不活性型RhoA遺伝子およびClostridium botulinum C3 transferase(C3)のプラスミドを導入し、心筋肥大因子であるendothelin-1(ET-1)、phenylephrine(PE)等の刺激による心筋細胞シグナル伝達に及ぼす影響の検討を、特に初期反応遺伝子であるc-fos遺伝子の発現に着目して行なった。心筋細胞に導入したc-fos promrtor/enhancerの活性化に対する影響にて、それぞれの因子のc-fos遺伝子発現に対する作用の判定を行った。Rhoを不活性化するC3の共導入はET-1、PEおよびPMAの刺激によるc-fos promotor/enhancerの活性化を抑制した。また、活性型Rhoの導入により、c-fos promotor/enhancerの活性化が生じ、この活性化はprotein kinase Cのdown regulationや、あるいはPKC inhibitor、tyrosine kinase inhibitor、PI-3 kinase inhibitorの投与により抑制されなかった。以上より種々の肥大刺激因子による心筋細胞のc-fos遺伝子発現にRhoが関与していることが判明した。 2.in vivoにおいて心筋においてRhoがいかなる役割を果たしているかを検討する目的にて、in vovoにてラットの心筋に活性型RhoA遺伝子プラスミドを導入する系の作成を試みた。現在は予備実験中であるが、HVJ-リポソーム法を用い、開胸直視下に心筋内に直接注射針にて注入することにより、ルシフェラーゼ遺伝子あるいは、内皮型NO合成酵素遺伝子を、効率よく導入できることを確認した。今後は実際に活性型RhoA遺伝子プラスミドを導入する予定である。
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