研究概要 |
1.ヒト臍帯から分離した血管内皮細胞を用いた,マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)の発現の検討. インターフェロン-γおよびスーパー抗原Staphylococcal enterotoxin Aの刺激によって,血管内皮細胞からのMMP-1,MMP-2のmRNAの発現が強まることがRT-PCRとノーザンブロッティングで確認できた.またこの発現はtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)によって用量依存的に抑制された. 2.川崎病患者血清中のvascular endothelial growth factor(VEGF)の測定. 20名の川崎病患児の急性期,回復期の血清VEGF値を測定し,急性期に有意に高値であることがわかり,また冠動脈病変をきたした患児では有意に上昇していた. 3.血管内皮細胞でのMMP発現に及ぼすVEGFの影響の検討. 血管内皮細胞をVEGFで刺激すると,MMP-1,MMP-2のmRNAの発現が強まることがわかった. 以上のことから,サイトカイン・スーパー抗原に加えて,VEGFのような血管新生に関わる増殖因子が血管の炎症の場で基底膜の破壊をはじめとする血管構造の破綻に関与していることが示唆され,今後そのメカニズムの解析と抑制因子を検討する予定である.
|