研究概要 |
1. 血管内皮細胞におけるメタロプロテイナーゼ発現の検討 ヒト臍帯から分離培養した血管内皮細胞をサイトカインTNF-αによって刺激し,メタロプロテイナーゼMMP-1の発現をノーザンブロッティングとウエスタンブロッテイングで検討した。MMP-1のmRNAは刺激後2時間をピークとして発現が増強し,蛋白レベルでも発現増強が見られた。血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)によるメタロプロテイナーゼMMP-1の発現への影響を同様の方法で検討した。VEGFは血管内皮細胞の増殖に明らかな影響を与えない0.5ng/mlの濃度でMMP-1のmRNA発現を増強させた。 2. 川崎病患児血清中のVEGF濃度の測定 川崎病における血管内皮細胞障害にVEGFを介したメタロプロテイナーゼの発現増強が原因となっている可能性を考え,22名の川崎病患児の急性期,亜急性期,回復期の血清中VEGF濃度をELISAで測定した。急性期はコントロールの他の熱性疾患にくらべて有意に高値を認めた。冠動脈障害の見られなかった患児(n=17)では急性期が最も高値であったが,冠動脈障害を認めた患児(n=5)では亜急性期がもっとも高く,亜急性期のVEGF高値が冠動脈障害と関連している可能性が示唆された。 3. 現在VEGFで誘導されメタロプロテイナーゼ遺伝子の活性化を促す転写因子ets-1について血管内皮細胞での発現を検討中である。
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