研究概要 |
維持血液透析中の慢性腎不全患者7名を対象として、n-6系多価不飽和脂肪酸であるγリノレン酸を内服投与(300mg/day)させ、投与前後の末梢血液の循環動態の変化および血漿、細胞膜中の脂肪酸組成の変化を検討した。 1.末梢血液の循環動態の変化 γリノレン酸投与2週後より、透析開始前の赤血球浮遊液のマイクロチャンネル(width6μm,length20μm)通過時間は短縮し、12週後には前値の約80%に短縮した。同様に、全血浮遊液のマイクロチャンネル通過時間(width6μm,length100μm)も徐々に短縮し、12週後には前値の約60%になった。 透析終了直前にも採血し、同様に赤血球浮遊液と全血浮遊液を調整して測定したところ、12週後には、それぞれ前値の約80%と約60%に短縮した。 さらに、内服前の血漿を12週内服後の全血に添加すると、通過時間が延長することがわかった。 2.血漿、細胞膜中の脂肪酸組成の変化 γリノレン酸投与により、血漿中リン脂質の脂肪酸組成のみでなく、赤血球膜リン脂質や白血球膜リン脂質の脂肪酸組成も変化した。この変化には一定の傾向があるようであるが、まだ確定したことは掴めていない。 これらの結果より、細胞膜中の脂肪酸組成の変化が、赤血球や白血球の変形能に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。しかし、今回の結果では膜の脂肪酸組成の変化は少なく、一定の傾向がまだ確定されなかった。現在のところ、膜の流動性については、膜内の脂肪酸自体の物体の変化のみならず、投与したγリノレン酸がコレステロール等の他の膜内構成成分、血漿と赤血球膜とのinterraction、さらには、白血球膜の変化に伴うさまざまなメディエーターの産生や放出に対しても影響を与えて、膜流動性を変化させているのだろうと推測している。今後、症例を重ねてこれらの未知の項目につき検討を加えていく予定である。
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