研究概要 |
平成9年度は,当科の遺伝相談外来をヘイリーヘイリー病(家族性良性慢性天疱瘡)患者4家系を集積し,それぞれ健康部皮膚,病変部皮膚の生検を行い,これらを光顕レベルで免疫組織化学的に検討した。 まずヘイリーヘイリー病の健常部皮膚,病変部皮膚,および対照として正常ヒト皮膚を採取後,OCT compoundに包埋,液体窒素とイソペンタンを用いて急速凍結し,クリオスタット6μmに薄切した後,免疫染色を行った。一次抗体としてデスモゾームの構成蛋白であるdesmoplakin I,II,plakoglobin desmoglein I,III,desmocollin I,II,III,plakophillin,adherens junctionの構成蛋白であるvinculin,E-cadhelin,P-cadhelin,ctin,α,β,γ-catenin,α,β-spectrin,α-fodrinに対するそれぞれの抗体を用いた。さらに上記の免疫組織化学染色について,蛍光顕微鏡のみならずconfocal顕微鏡によりさらに詳細な蛍光の分布を観察した。この結果,正常ヒト皮膚と比較しヘイリーヘイリー病の健常部皮膚では,光顕レベルにおいてデスモゾームおよびadherens junctionの構成蛋白の分布に大きな違いはみられなかった。しかし本症の病変部皮膚の棘融解細胞では,正常ヒト皮膚と異なり,デスモゾームの構成蛋白に対する抗体は細胞間に認められず,細胞内にびまん性に分布する傾向があった。またadherens junctionの構成蛋白に対する抗体は,棘融解細胞の細胞間では減弱する傾向が認められた。 今後は,本症患者の病変部皮膚および正常ヒト皮膚を,凍結固定,凍結置換法および凍結超薄切片法を用いたpost-embedding免疫電顕法により観察し,微細構造レベルにおいて細胞接着蛋白の微細局在分布を定量的に比較する予定である。その結果,本症皮膚において分布状態の異常をきたしている細胞接着蛋白を電顕レベルで特定し,さらに,いまだ同定されていない本症の病因遺伝子を推定する。
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