1. 本研究ではラットにKDH-8肝癌細胞を植え込んだ腫瘍モデルと、ブドウ球菌移植の感染およびテレビン油塗布の感染・炎症モデルを作成できた。各々のモデル動物にC-14標識フルオロデオキシグルコース(C-14-FDG)を投与した結果、すべての病巣にC-14-FDGの強い集積のあることが確認できた。またオートラジオグラフィも行い、病変部に瀰漫性の集積を呈していた。C-14-FDGの集積は感染・炎症モデルよりも腫瘍モデルの方が明らかに高いことが確認された。このことより、FDG集積の定量的解析により腫瘍と良性疾患との鑑別がある程度可能であることが示唆された。 2. C-14-FDG集積機序を解明するため、病巣のへキソキナーゼ活性を測定した所、腫瘍と共に性状の筋肉組織にも高い活性を認め、ブドウ糖の代謝の亢進していた。あわせて凍結切片において膜の輸送遺伝子であるグルコーストランスポーター(GLUT)を免疫組織染色した所、腫瘍巣においてGLUT1とGLUT2の発現が増加していたが、GLUT3-5は発現していないことが確認できた。他方炎症モデルではGLUT1よりもGLUT3の発現が強く、この点で両者の鑑別を行いうる可能性が示唆された。 3. 他方ポジトロン断層撮影法を用いた臨床例での検討は十分できていないため、塩化タリウムを用いた甲状腺腫瘍の集積と組織中のDNAおよび臨床経過を検討した。タリウムの強く集積する例ではDNAの異形成が強く増殖しやすく、悪性度の高い腫瘍であることが確認できた。このようにトレーサの集積度から悪性腫瘍の性質を的確に把握できる可能性が示唆された。
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