本年度は、大阪大学レーザー核融合研究センターの共同研究課題として採択され、照射システムの設計および照射後の細胞の生存率判定に必要な実験体制の整備を行った。 1.照射システムの設計 X線源については、大阪大学レーザー核融合研究センターにおいてGMIIの超短パルスレーザーを金属薄膜に集光して生成するX線発生システムを利用させて戴くため、X線源は真空中にある。しかも、真空槽内の容積は限られており、大面積の照射試料を置くことは難しいので、照射用の細胞の培養にはレイトンチューブを用いそのまま密栓して真空槽内に設置することとした。この系の真空テストおよび培養テストを行い、いずれも良好な結果を得た。また、具体的な照射条件は得られるX線強度に依存するが、X線照射時の試料の配置と相対的な照射線量について検討を加えた。以上の検討で生物試料側の照射準備はほぼ完了したが、線源側の準備状況が十分に整わず、今年度は実際の照射実験が実施されなかった。 2.照射後の細胞の生存率判定に必要な実験体制の整備 大阪大学レーザー核融合研究センターのシステムを利用するため、細胞培養などの生物実験用のシステムをゼロから立ち上げる必要が生じた。第1段階の全体のレイアウトは、(1)照射前の細胞の状態を良好に保つための細胞培養、(2)照射直後の細胞の処理(無菌操作)と試料調製、(3)コロニー形成のための細胞培養、(4)コロニーの計測と結果の判定、となる。従って、東京から細胞を運搬し、大阪で照射実験およびその後の細胞培養を行い、(コロニー形成には7-10日かかるため)コロニー形成後の細胞を東京に郵送して東京で結果判定を行う、という実験体制を組むこととし、予備実験を行った。非照射の細胞の場合にはこの様な実験で、80%以上のコロニー形成率を示し、この様な方法が有効であると判定した。
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