研究課題/領域番号 |
09877169
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 哲也 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (30189047)
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研究分担者 |
岩本 愛吉 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10133076)
淺井 佐江 東京大学, 医科学研究所, 助手 (10159353)
吉川 宏起 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (10272494)
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キーワード | EPI法 / 拡散強調画像 / 脾臓病理 / AIDS / MRI |
研究概要 |
静磁場強度1.5Tの臨床用MR装置にて躯幹用コイルを使用し、エコープラナー法(TR/TE/flip angle=6500msec/80msec/90degree:撮像時間7sec)にてb値を0、70,250sec/mm^2の3点測定法で見かけの拡散係数(ADC;apparent diffusion coefficient)を測定した。健常志願者15名(26-45歳)では肺臓のADCは0.87±0.14x10^<-3>mm^2/secであった。この数値は既に発表された脾臓ADCに非常に近い数値である. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の病態は進行する免疫低下・不全である。脾臓などのリンパ組織はHIVの増殖により破壊されることが剖検例の検討より知られている.そこで今年度はHIVの脾臓の破壊の程度をADCで鑑別できないかを検討した。HIV感染者の中で、肝硬変による脾腫やリンパ腫の脾浸潤などを認めない、HIVのみが脾臓の構造改築に関与していると考えられる9症例の脾臓のADCを検討した。これらの症例のADCは0.53±0.42x10^<-3>mm^2/secとばらつきがある結果となったが、1.1x10^<-3>mm^2/secから0.5x10^<-3>mm^2/secのADCであった4症例はその後抗HIV薬により比較的免疫を維持した状態を保っているのに対し、0.2×10^<-3>mm^2/secの1例、0.08x10^<-3>mm^2/secの2例は抗HIV薬による治療を開始したが、治療に反応せず死亡した。3例とも病理解剖されたが全例脾臓は傍皮質のリンパ球激減、リンパ濾胞の萎縮を認めリンパ装置の高度の萎縮を認めた。この所見はリンパ組織の一つである脾臓がHIVにより破壊され、抗HIV療法を開始しても免疫が回復しなかった臨床的事実を裏付けるものと言える。
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